潜在能力

「ピン~キリ」労務人事管理における「キリ」の話

往来庵の菊地克仁です。

いつも私のメルマガをお読みいただき、どうもありがとうございます。

昨年1年間、雑誌「企業と人材」(産労総合研究所刊)で毎月連載記事を載せさせていただいたこともあり、いろいろな法人関係の情報に接する機会が増えたように思います。

そんな中、このタイトルそのものを感じる話を、ある方から耳にしました。私としては、「経営者として最低だな!」と感じた話です。だから「キリ」の話なのです。

この企業は一部上場企業ですが、それまで全社員に対して、残業手当をロクに払っていませんでした。サービス残業は「会社への感謝と無料奉仕の精神を示す美徳のひとつ」という姿勢が当たり前という社風です。

家庭を持つ一部の従業員が、この暗黙の労働条件の実態に耐え切れず、労働基準監督署に匿名の訴えを起こしました。すぐに労基署から本社に調査が入り、未払いの残業手当を、過去に遡ってすべて支給するよう、改善命令が出されました。

この会社の経営者は労基署の指導に従い、未請求だった残業時間の申請をするよう、全社員に指示を出しました。

社員たちは「これで経営側の考えも、労働条件も少しは改善されて、働きやすい環境になるだろう。」と期待感で胸を膨らませたそうです。会社の指示に従い、多くの従業員が残業の未払い申請を出しました。ここまではよくある話です。

私が「この経営者、最低だな!」と思ったのは、ここから先の話です。

全員が残業申請を出し終わったところで、会社から「特定の社員」に、以下の通知が送られて来ました。それは、

「残業申請依頼にも関わらず、今回申請をしなかったことへの謝意として、あなたを社長との会食にご招待したい。」

という主旨のものでした。

その社長との会食会場で、社長がマイクを持って、

「ここに集まった皆さんは、私の本当の仲間だ!」

と告げたそうです。だから社長のこうした人柄を知っていた一部の社員たちは、最初から誰一人この申請をしませんでした。彼らは、ここでもまた

「社長から気に入られるチャンス」

をモノにしたのです。社内営業としては満点でしょう。

一方、まともに指示を聞いて申請を出した社員は、「キミは仲間じゃないってこと、これでハッキリしたね!」と社長から告げられたようなものです。今後の評価や出世に大きく響くことでしょう。

これは絶対君主制による統治国家のようです。全員がトップの顔色を見ながら動きます。これはフィクションではなく実話です。でもよく考えてみると、これは企業に限らず、日本の近隣にある国でも、あるいはヨーロッパにも、トップが強権をもって、同じようなことをしている国があります。

企業トップがこのような管理体制を取るというのは、それなりの理由があると思います。私は少なくとも、以下のような理由があるのではないかと思います。

1.トップが「現体制と自分の立場」を「力」で守るため。

2.自分に「人徳がない」ことを知っているから。

3.そもそも社員なんて「使い捨ての材料」だから。

他にもあるかもしれませんが、「社員と共に栄えよう!」などいう考えは、まったくないことだけはわかります。

「私に忠誠を尽くす社員には、褒美をつかわす!」

的な精神でしょうね。江戸時代の大名と家臣の関係みたいです。

こういった社風のある企業にお勤めの方に、私は「頑張って、我慢して働いていれば、そのウチいいこともあるさ!」などというアドバイスは一切しません。

「こういった組織から離脱するかしないか、それが、今のあなたの選択ですよ!」

とお伝えます。

一番恐ろしいのは、いつの間にかこうした社風に染まってしまい、同じ視点で部下に接するようになることです。ゾンビになった本人は、自分がゾンビになったことがわからないのと同じです。

「この状態のまま」でもいいし、「転職」しても、「起業」してもいいし、ここから先は本人が決めることです。「一度っきりの人生」です。自分で納得できる道を選ぶ以外に、解決策はないでしょう。

ただ、そのために自分の中に隠れている「潜在能力」を知り、活用することで、「自分の人生を変えていくことができるんだ!」ということを知ることは、とても大切なことだと痛感しています。

今回も、最後まで私のメルマガをお読みいただき、どうもありがとうございました。

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